甘酒は沸騰させたら意味ない?酵素や麹はどうなるの?
甘酒は美味しく飲みながら栄養補給にもなる良いことずくめの飲み物です。
しかし、「酒」の字がついていることから、気になるのが温度管理。
日本酒は、冬には熱燗がお馴染みですが、直火で沸騰させるとアルコールが失われてしまいます。
寒い季節にアツアツの甘酒を飲むと体が芯から温まり美味しいですが、うっかり沸騰させると日本酒のように何かの成分が失われないか心配です。
甘酒は沸騰させてもいいのでしょうか?
甘酒は熱に弱い?
寒い季節に体に染みるようなあつあつの甘酒は美味しいですよね。
ブームになる前から年末年始や、ひな祭りの肌寒い季節で振舞われていたこともあって、温かい飲み物のイメージが強いです。
しかし、更にさかのぼった、はるか昔の江戸時代には、夏の暑さで奪われるスタミナ補給に欠かせない飲み物でした。
実際、俳句に必須の歳時記によると、甘酒の季語は夏に定められています。
砂糖が高価だった当時、果物以外の甘いものは珍しく、冷やして飲む甘酒は夏の楽しみだったのでしょう。
甘酒は発酵食品ですから酒粕、米麹どちらから作られていても豊富な菌や酵母、酵素が生きていますが、熱が弱点。
いくら体を温めるためとは言え、ぐらぐら加熱しては甘酒の中で有用な栄養が失われてしまいます。
栄養素的には、江戸時代のように加熱せず飲むのが菌たちが失われる心配が少なく、ベターとも言えます。
麹菌
米麹の甘酒は55℃~60℃で発酵させて作ります。
つまり、60℃以下では破壊されない、ということですね。
しかし、甘酒の美味しさは適度なところで発酵を止めることで作られます。
麹を破壊せずにそのまま保管するということは、発酵がどんどん進んでしまうということ。
麹は冷凍庫くらいの低温でなければ発酵を止めないので、冷蔵庫で保管するくらいでは発酵は止まりません。
手作り甘酒なら、1週間を過ぎた頃には過発酵で美味しく飲めなくなるでしょう。
出来立ての味を極力長く維持するには、沸騰させて熱で麹を雑菌と一緒に殺菌させる必要があります。
味を取るか、保存性を取るか、悩ましいところです。
麹菌は70℃以上で活動が低下し、75℃で完全に破壊されます。
生きている麹を摂取することを優先させるなら、高くても60℃までにして飲むのがオススメ。
因みに、人がアツアツと感じるのは75℃以上なので、「ほんのりと温かいかな?」くらいを目安にすると加熱しすぎを防げます。
酵母
酒粕には血管を柔らかくし、血行促進効果の高い酵母が含まれていますが、非常に熱に弱いという弱点があります。
どれくらい熱に弱いか、というと、たった10℃でも破壊されることがあるくらい。
10℃と言えば、梅が咲き始めるくらいの気温ですよね。
つまり、通年の常温にさえ耐えられないということです。
もちろん、ここまで極端に熱に弱いのはごく一部の酵母ではありますが、それでも40℃にはほとんど全滅。
頭の周りは大食いの脳の機能を賄うため、何本もの太い血管が張り巡らされています。硬くなって、1本でも切れたり詰まったりしては一大事。
酵母で血管を柔らかくする効果は、脳梗塞を予防するにも有効ですから、グツグツ沸騰させて破壊するのはもったいないです。
酵母は甘酒でも酒粕のほうにしか含まれていないので、酒粕甘酒を飲むなら加熱のし過ぎには注意しましょう。
乳酸菌
キムチ、ヨーグルト、納豆を始め多くの発酵食品は豊富な乳酸菌が含まれています。
ジャパニーズヨーグルトとも呼ばれる甘酒にも含まれているにはいますが、豊かな甘味で美味しく飲めるうちはそれほど多くありません。
しかし、保存期間が長くなって発酵が進んでくると、乳酸菌が増えて酸味が強くなってきます。
ヨーグルトを思わせる爽やかな酸味は、乳酸菌増加によるものが多いです。
甘酒に酸味が出てくるのは、長期保存以外にも、手作りの失敗原因にもよくあること。
甘酒の甘味と酸味が組み合わさっても美味しくないので、オススメはしませんが、多少酸っぱいくらいでは健康に悪影響が出ることはありません。
酵素
酵素は比較的熱に強いとされていますが、それでも麹と同じく60℃くらいの温度で失われます。
ファスティングの流行のときにも話題になりましたが、実は酵素は甘酒に限らず、肉、野菜、魚あらゆる食品にも含まれています。
にもかかわらず酵素が摂り入れられる食品が限られているのは、加熱すると破壊されるからです。料理の多くは、煮込んだり、焼いたりしてとにかく火を通します。
火を通さず口にするのは、サラダやお刺身のごく一部の料理くらい。
ですから、食品から酵素を取るのは事実上難しいことなのです。
甘酒は一般的な食材と違って、完全に火を通さなくても美味しく飲めます。
生きた酵素を取り入れるのに、もってこいの食品とも言えます。
市販の甘酒を飲んでも意味ない?
市販の甘酒はほとんどと言っていいほど、火入れと呼ばれる熱処理が施されています。
火入れされていない生の甘酒を購入しようと思ったら、お取り寄せするようなこだわりの一品に限られます。
スーパーやコンビになど、どこででも売られているような商品に生の甘酒はありません。
そもそも、市販の甘酒は日本のどこかにある工場の生産ラインを経て、全国各地に運ばれます。
場合によっては、店舗に並び私たちが手にとるまで何日、下手をすれば何週間もかかるかもしれません。
そして、購入されてから更にそれぞれのご家庭で実際に飲まれるまで、保管されます。
各ご家庭の保管状況は千差万別です。
「冷蔵保存」と記載があるにもかかわらず、うっかり常温保存する人もいるでしょう。
そこで、火入れされていない生の甘酒だとどうなるでしょうか?
どんどん発酵が進んで、味が劣化、最悪の場合、爆発する可能性も考えられます。
市販品は購入する各ご家庭にとって、美味しいだけでなく使いやすいものでなければなりません。
火入れで発酵を止めるのは、味の劣化を防ぎ保存性を高めるために、仕方のないことなのです。
しかし、発酵を止めるということは、同時に甘酒の中で生きている菌や酵素を破壊することでもあります。
健康や美容に嬉しい効果をもたらすのは、甘酒に含まれる酵素や菌のおかげでもありますから、火入れで殺菌されていたら意味がないような気もします。
確かに、火入れは高温で熱処理することなので、加熱に弱い菌、酵母、酵素、その他栄養は破壊されるかもしれません。
しかし、一方でオリゴ糖やビタミンBなどの熱に強い栄養はそのまま。
オリゴ糖はあらゆる食品を溶かす胃酸すら通り抜けて腸に届きますし、むしろ、酵素や菌から生み出された栄養がメイン。
市販品の甘酒そのものが丸ごと無駄になることはありません。
市販の甘酒の便利さは手作りに負けず劣らず魅力的ですから、火入れで破壊される酵素たちにはそれほど神経質になる必要はないでしょう。
もしも手作り甘酒を間違えて沸騰させてしまったとしても、同じことが言えます。
まとめ
いかがでしたか?
確かに、沸騰させることで失われる栄養はどうしても出てきます。
しかし、甘酒の栄養は熱に弱い酵素や麹菌だけではありません。
甘酒のパワーを余すところ無く完璧に、とこだわるならともかくそれほど沸騰させたかどうかにこだわる必要はありません。
甘酒の効果は1日だけでは得られず、毎日続けることで少しずつ変化を感じられるようになります。
続けることが大切なので、毎回「完璧に栄養を!」とこだわり過ぎてはすぐ疲れてイヤになります。
火入れも、市販品も有効活用しながら甘酒ライフを楽しみましょう。
以上、「甘酒は沸騰させたら意味ない?酵素や麹はどうなるの?」でした。