甘酒 火入れしないと栄養と酵素はどう変わる?
手作り甘酒は、キリ良く酒粕や甘酒を使い切ろうとすると、どうしても1回で出来上がる量が多くなりがち。
まとめて作ると、毎日決まった量を飲んでいても、なかなか減りません。
かと言って、 せっかくの甘酒をそのまま腐らせるのはもったいないですもね。
火入れは甘酒の保存性を高める定番の方法です。
店頭に並ぶ市販品の多くも、火入れされています。
しかし、甘酒の栄養を余すところなく摂取しようと思うなら、火入れされてない生甘酒がベストとも言われていますよね。
火入れしないと、甘酒は具体的にどう変わるのでしょうか?
まとめてみました。
そもそも火入れとは?
火入れとは、「完成した甘酒を一煮立ちさせる」こと。
要するに、甘酒に行われる熱処理のことを、特別に火入れと呼んでいます。
手作りの甘酒は、火入れしていないと発酵がどんどん進み
酒粕の甘酒 3日間
程度しかもちません。
材料をキリ良く使いきれるように、手作り甘酒は1回でできあがる量が多くなりがち。
お茶感覚でがぶ飲みするわけにもいかないので、続けて飲んでいても味が変わるまでに飲みきれないことが多々あります。
そこで重宝されるのが火入れ。
熱処理は、雑菌の繁殖を抑えて衛生面を保つ目的が真っ先に思い浮かびます。
甘酒に限らず、余ったおかずを翌日に改めて食べるときは火にかけて温めなおしますが、これは冷蔵庫で冷たくなったもの食べやすくするだけではありません。
冷蔵庫の中は常温に比べて温度が低いですが、それでも雑菌は十分に増殖できる温度。
冷蔵庫の中でじわじわ増えた菌を熱で殺菌する狙いもあるのです。
甘酒の火入れにも殺菌効果がありますが、それと同じくらい重要なのが発酵止め。
米麹も酒粕も発酵食品。
甘酒にして美味しく飲むためには、発酵が適度なところで火から下ろして出来上がりにするのですが、冷蔵庫の中でも酵母や麹が生きていてじわじわと発酵を進めます。
やがて冷蔵庫の中で発酵具合が、甘酒として美味しいところを過ぎてしまうため、火入れしないと、こうまで極端に日持ちが短くなるのです。
しかし、酒粕に含まれている酵母も、麹も熱に弱い性質を持っています。
麹は70℃で活動を止めますし、アルコールを作りだす酵母は40℃で破壊されます。
火入れの「一煮立ち」とは要するに沸騰させるということ。酵母も麹もともに機能しなくなるので、手作り甘酒の発酵も止まり、味が変化しにくくなります。
ですから、火入れすることで
酒粕の甘酒 1週間
とどちらも火入れしない場合と比較して、倍以上日持ちするようになります。
火入れすると甘酒はどうなる?
火入れした甘酒と、そうでない甘酒の差は、市販品と手作り品の差と重なる部分と言えます。
保存できる期間が長くなる
市販の甘酒を見ると、賞味期限が半年から1年も先のものがほとんど。
酒蔵の甘酒の中には、棚に陳列して常温での販売も珍しくありません。
火入れして1下月がせいぜいの手作り甘酒とは大きな違いです。
市販の甘酒が手作りよりも保存しやすいのは、工場ならではの徹底した衛生管理もあるでしょうが、火入れと保存料や添加物の有無が大きな影響を与えています。
今や飲み物に限らず、市販の加工食品には保存料が当たり前ですからね。
添加物を極力避けて健康を取るか、多少長期保存しても大丈夫なように利便性を取るかは悩ましいところです。
とは言え、甘酒は健康や美容に意識が高い層に注目されている飲み物。
市販品でも米麹、米、塩のシンプルな甘酒が人気を集めています。
保存料や添加物が少ない甘酒は、その分賞味期限が短い傾向が強いです。
商品によっては、半年どころか3ヶ月持たないものも見かけました。
市販の甘酒は、工場の生産ラインを経て、各地に運ばれます。
店頭に並んで私たちの口に入るまで、数日かかりますし、各家庭の保存状況に耐えなければなりません。
当然ご家庭によって保存方法は異なりますから、発酵が進んで、最悪爆発する可能性もあります。
あらゆる状況を想定して賞味期限を設定しなければなりませんから、保存料を減らせても、ほとんどの市販品が火入れされているのは、仕方ないとも言えるでしょう。
栄養が損なわれる
火入れすることで、麹や酒粕に含まれる菌や酵母の活動を止められますから、発酵がそれ以上進まなくなり味の劣化を緩やかにできます。
しかしそれは逆に言えば、生きている麹や酵母を摂取できなくなるということ。
発酵を進める酒粕や麹は、栄養の塊で、甘酒には100種類以上の酵素が含まれていると言われています。
例えば、米麹の甘酒の甘味は、お米を分解したブドウ糖のおかげですが、これも麹に含まれるアミラーゼの働きによるものです。
できたての甘酒には酵素がたっぷり。
この酵素が、消化をサポートしてくれるので、体の疲れが取れやすくなったり、肌のターンオーバーが促進されたりと、健康と美容に嬉しい効果が期待できるのですね。
しかし、火入れされれば酒粕の酵母や麹と一緒に酵素も破壊されます。
他にも熱に弱い栄養が破壊されるので、甘酒の栄養を余すところ無く取り入れるためには、火入れされていない生甘酒を選ぶ必要があります。
米麹を火入れしないで作る
火入れされている甘酒を飲んでも、意味がないわけではありません。
火入れされていても、ビタミンBなど熱に強い栄養は変わらず補給できますし、それに伴う甘酒の効果も期待できます。
ただし、せっかく手作りするなら、酵素や酵母にまでこだわりたいのが心情です。
火入れとは要するに一煮立ちさせることなので、発酵でできあがる米麹甘酒はそのまま火にかけず容器に入れれば生甘酒の完成。
火入れした状態にはなりません。
ただそのままでは、どんどん発酵が進んでしまうので、上で説明した通り1週間を目安に飲みきってください。
酒粕甘酒を火入れしないで作る
一方、酒粕甘酒は材料を加熱しながら作ります。
酒粕は解けにくいので、どうしても火にかけないと塊が残ってしまうからです。
そもそもが加熱しながら作るので、火入れとの境界が曖昧になりがち。
材料を溶かしているうちに熱しすぎて、火入れしたのと同じになってしまうこともあります。
酵素や酵母を生かしながら酒粕甘酒を作るためのコツを確認しましょう。
弱火を維持する
酒粕の酵母や酵素は、火にかけた途端に失われるわけではありません。
具体的には
- 酵母は40℃
- 酵素は70℃
でそれぞれ破壊されます。
ですから、40℃以下であれば酵素も酵母も維持しながら、甘酒が作れるというわけです。
加熱でも火が強くなれば、あっという間に40℃を超えてしまいます。
ですから、酒粕甘酒を作るときには、温度が高くなりすぎないように弱火を維持しましょう。
最後の火入れの役割を担った「一煮立ち」のかわりに、1分ほどかき混ぜながら温めると、最後の酒粕や砂糖の塊が溶けて滑らかに仕上がります。
乾燥タイプを使わない
一般的に販売されている酒粕は、四角いカチカチの乾燥タイプです。
賞味期限も長いので、保存も便利なのですが水に溶けにくいので低温で作る生甘酒では、ダマが残ってしまうかもしれません。
ですから、解けやすいように生タイプの練り酒粕を用意しましょう。
どうしても乾燥酒粕を使いたいなら事前に30分程度水に浸して柔らかくしておきます。
1日で飲みきれる量を
酒粕甘酒は、ただでさえ日持ちしません。
発酵させず、砂糖も加えるのでどうしても雑菌が繁殖しやすいのが理由です。
火入れしなければ更に傷みやすくなります。
ですから、できるだけその日のうちに飲みきれる量だけ作りましょう。
米麹甘酒のように発酵させる手間もないので、少量ずつ作るのにもそれほど負担はかかりません。
どうしても無理そうなら、忙しいときは火入れしてまとめて作るなど、作り分けすると効率的です。
まとめ
いかがでしたか?
手作り甘酒はどうしても市販に比べると、傷みやすいです。
火入れすれば発酵が止まるので、格段に日持ちするので忙しいときにまとめて作った甘酒の保管に便利。
しかし、火入れすることで失われる栄養もあります。
せっかく手作りするなら、火入れせずに甘酒本来の味と、栄養を取り入れたいですよね。
できたての甘酒は栄養だけでなく、美味しさも格別。
うまく時間をやりくりしながら、手作り甘酒を楽しみましょう。
以上「甘酒 火入れしないと栄養と酵素はどう変わる?」でした。